旅の歌 4
二上山は大和盆地と河内平野をさえぎっている葛城山脈の北端にあたり、大和盆地から仰げば、二つの馬の背のような嶺をもっていました。
雄岳と雌岳があり、その間にしずむ夕陽は荘厳であって、西方浄土を思わせる場でもありました。
むくわれることなくさまよう霊魂をここにまつることによって、持統天皇はいくらか心やすまる思いをもったのでしょうか。
うつそみの人なる吾や明日よりは二上山を兄弟とわか見む 大伯皇女
〔私は生きていますのに、皇子はすでに亡く、二上山に魂しずまりました。この二上山を弟と思って見ることにいたしましょう。〕
・・・言葉かよわぬ二人となった嘆きは、大和平野を中にしてかなしみをかわす場になりました。
磯の上に生ふる馬酔木を手折らめど見すべき君が在りといはなくに 大伯皇女
〔磯のあたりに咲いているあしびを手折ろうと思いますけれど、手折ったとて、お見せする皇子はもはやこの世にはいられませぬ。〕
大伯皇女は伊勢からの旅が終って大和へかえってからも、二上山が西方浄土であるとは言っても、ここの夕映えはいたくさびしいものでした。